妖怪「片輪車」

妖怪「片輪車」

滋賀県に由来する妖怪と言えば、片輪車(かたわくるま)がいます。

 

片輪車とは、炎に包まれた片輪だけの牛車で、美女、あるいは恐ろしい形相の男を乗せて走り、姿を見たものは祟られると言われます。

 

日本各地に由来がある妖怪ですが、滋賀県においては、寛文年間の近江の国の甲賀郡で、1661年に目撃例があるそうです。
この頃、甲賀郡では、毎夜、毎夜、この片輪車が現れて、通りを疾走していました。

 

人々は、片輪車を見る事はおろか、話をしただけでも、祟りがあると恐れて、毎日、怯えて暮らしていました。

 

しかし、ある好奇心の強い女が、この片輪車の正体を知りたくなり、夜中、戸の隙間から、こっそりと片輪車を見てしまうのです。
女は、片輪車と目が合ってしまいます。
驚く女に片輪車は、「儂を見るより、汝の子を見よ」と怒鳴ります。

 

女が家の中を振り向くと、寝かしていた子供の姿がありません、そう、女の子供は、片輪車にさらわれていたのです。

 

女は、自分のした事を後悔し、戸の表に、「罪科(つみとが)は我にこそあれ小車のやるかたわかぬ子をばかくしそ」と書いた、句を貼りつけました。

 

「罪は私にあるのですから、子供は返して下さい。祟りなら私が受けます」と言ったのです。

 

その日の夜、片輪車は、再び現れました、そして、女の書いた、句を大声で読みあげました。
「お前は優しい女だ、子供は返してやろう。」

 

片輪車は、そう言って、子供を女に返し、二度と、その村に出現する事は、無かったそうです。